フィットネスジムの持続的な成長と安定した経営基盤を築くうえで、顧客生涯価値を高める施策は必要不可欠です。本記事ではフィットネスジム経営における顧客生涯価値に大きく寄与する定着率という考え方についてご説明いたします。
会員の定着率を把握しよう
顧客生涯価値とは、1人の顧客が企業と取引を開始してから終了するまでの期間で企業にもたらす利益の総額を指します。
フィットネスジムにおける主要の顧客は会員です。主な収入源となる会費収入は、会員数が増えることで大きく変動します。会員数を増やすための施策として、入会キャンペーンを立案して広告チラシやSNSを活用した広報活動に力を入れている経営者様は多いのではないでしょうか?
次に顧客生涯価値に直結する「継続期間」に関する問題です。新規会員を獲得するために開催したキャンペーン・大規模な広報活動も、短期間で退会されてしまってはそのコスト自体が無駄になってしまいます。また継続期間が短くなるため、顧客生涯価値を下げる原因となります。ここで重要となるのが会員の定着率という考え方です。
定着率とは、特定の期間にわたってサービスや商品を継続利用いただいている顧客割合を示す指標となります。例えば過去1年間に入会された会員のうち、半年後・1年後にどれだけ在籍しているのかを示す数値です。
この数値は会員の増減を判断する材料ではなく、提供しているサービスがどれだけ顧客に受け入れられているかを測る上で非常に重要な要素となります。定着率が高いということは、会員がフィットネスジムのサービス(設備・スタッフ・プログラムなど)に満足している証拠となり、ロイヤリティが高い状態と判断できます。
次に会員の定着率を管理する手法を2点ご案内いたします。
管理手法1 コホート分析
たとえば、昨年開催した入会キャンペーンで入会した会員は、現在も施設を利用し続けているでしょうか? そのキャンペーンには、期待通りの集客効果があったと言えるでしょうか? 単純な会員数の増減だけを確認する経営では、このような「施策の効果」を正確に判断することは難しいものです。
このような場面で役立つのが、コホート分析です。コホートとは、「昨年のキャンペーンで入会した新規会員」のように、共通の属性を持つ特定の集団を指します。コホート分析では、この特定の会員グループが、入会後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月と、時間経過とともにどれだけ継続してくれているかを追跡し、定着率を分析できます。
入会キャンペーンにおける優待期間が終了するタイミングで退会する会員の比率が多い場合は、フィットネスジムのサービス自体に魅力が不足している、もしくは提供するサービスに問題を抱えていると判断できます。
一方で優待期間の終了後も継続される会員の比率が多いのであれば、入会キャンペーンの特典以上にフィットネスジムのサービスに価値を見出していただけた証拠となります。
このように、コホート分析は、過去のキャンペーンが長期的な会員定着に貢献したかを明確にし、今後の経営戦略を立てるうえで非常に重要な示唆を与えてくれます。
管理手法2 リテンションレート分析
コホート分析が特定の集団の動向を追うのに対し、よりシンプルかつ全体像を把握するのに役立つのがリテンションレート分析です。これは「顧客維持率」とも呼ばれ、特定の期間において、会員がどれだけ継続して利用しているかの割合を示す数値です。
リテンションレートを把握することで、クラブ全体の健康状態を客観的に評価できます。例えば、月ごとのレートを継続的に計測すれば、前月比や前年比で定着率がどう変化したか、一目でトレンドを把握できるようになります。
この分析は、経営上の課題を早期に発見し、迅速な対応を可能にします。レートが急に下がった場合、その月に何か問題(例:大規模な施設のメンテナンス、スタッフの対応ミスなど)があった可能性を示唆し、原因究明と改善策の立案につながります。
また、この分析は施策の効果測定にも非常に有効です。新しいプログラムやサービスの導入前後でリテンションレートを比較すれば、その施策が会員の継続利用にどれだけ貢献したかを定量的に評価できます。
リテンションレートは、以下の計算式で簡単に算出できます。
(期間終了時の会員数 − 期間中の新規会員数) ÷ 期間開始時の会員数 × 100
この分析は、日々の運営データから簡単に実施できるため、コホート分析と合わせて、より多角的な経営判断を下すための強力なツールとなります。

まとめ
「会員定着率の管理手法 コホート法とリテンションレート分析で顧客生涯価値を高めよう」と題して、ご紹介してまいりました。昨今、注目されている月額定額制のサブスクリプション型サービスには、競合他社が多く常に優れたサービス提供と安定したサービス稼働が求められます。新規入会者の獲得ばかりにフォーカスしていても、継続していただくためのインフラ整備やサービスの拡充なくしてフィットネスジムの経営は困難です。
今回紹介させていただいた顧客定着率の管理手法を参考に、ご自身の経営されるフィットネスジムの会員定着率を分析していただくことをお勧めいたします。
このような管理手法を用いるために、適切な情報の入力・管理のできるシステムの導入が必要不可欠です。弊社のご提供する会員管理システムには、顧客動向を管理するための様々な機能をご用意しております。もしご興味を持たれましたら、ダウンロードページより資料をご覧ください。
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